いよいよ今週はコミュニケーション技術についての勉強をしていきます。
しかしその前に、恋愛にまつわるお金の話をここですこしだけしておきましょう。
というのも、恋愛には周知の通り、お金がかかるからです。
先月の講座のなかでもプロフェッショナルを雇う有効性についてずいぶんと説明してきました。もちろんここにはそれなりのお金がかかります。洋服や化粧品を揃えるのも無料とはいきません。食事や映画といったデートをするにも基本的には自分の分は自分で支払うことを念頭に置いておく必要があります。毎月のメールや電話の支払いもばかにはなりません。
これらの出費は、恋愛に支払われる文字通りのコストです。
どの部分にどれだけお金を使っても、それまでの生活がかわらないような人は構いませんが、おそらくそれが許されるのはほんの一部の人でしょう。そうではない場合は、計画的に、どこにお金を使っていくかを吟味していく必要があります。
しかし恋愛におけるコストを考えるとき、実は一般的な家計簿のような仕分けでは実体が見えてきません。それが見えないと、コスト自体を考えることが難しくなってしまいます。
では実際にここでいちど自分の支出についてふり返ってみましょう。
・紙とペンを用意してください。
・毎月の収入を記入します。
・支出の仕分けは2種類です。概算でも構わないので「生活」と「恋愛」の2つに分けます。
・次に「生活」と「恋愛」の内訳を書いていきます。
・勘定項目は一般的な家計簿の項目で構いません。「賃料」「保険」「光熱費」「交際費」「交通費」「日用品」「医療費」「衣料品」「美容費」「化粧品」「食料品」「外食費」「家電製品」といった項目です。
しかしここで大事なのは、一見するとひとつに見える項目も、きちんと「生活」と「恋愛」に分けることです。「外食費」という項目も友人たちとの「外食」と、恋愛を目的とした「外食」に分けて考えましょう。自分の美を支えるための金額はすべて「恋愛」の範疇です。「美容院」「化粧品」などはもちろん「恋愛」に含まれます。
このような「恋愛」を意識した仕分け方をすると、お金に対して「このお金はなんの目的のために支払われているお金なのか」ということを意識するようになり、恋愛に対する集中力も高まっていきます。
最後に、それらの総額を把握して「生活」と「恋愛」の2つの支出を、円グラフで表現してみましょう。それぞれのパイの形はどのようになったでしょうか。
そしてもし恋愛に対するお金の使い方が適切でないと思った場合には、その内訳のなかでなにを節約し、なにに投資するかを考えることになります。
これから自分を磨いていく段階にあるときは、ほとんどの場合、恋愛にかける金額はいまよりも増えるはずです。そうなると、生活のパイのなかから節約し、その分を恋愛のパイに持ってくる必要があります。もちろん節約にも投資にも限度はありますが、お金の使い方を「生活」と「恋愛」にわけるといった考え方の切り口を自分のなかに持っておくことは無駄ではありません。また、
「そんな節約をする余裕なんてない!」
という人は、通信費から考えてみてもよいかもしれません。
なぜコミュニケーション技術の話の前に、この恋愛に支払われるコストの話をするかというと、簡単に誰でも節約できるのが通信コストだからです。
みなさんは先ほどの仕分けのなかで、この通信コストをどちらに加えたでしょうか? もし「生活」に振り分けたとしてもそれは間違いではありませんが、その場合はその生活コストのなかでもっとも恋愛コストに振り替えやすいのが通信費となります。
携帯電話は現代の恋愛においてなくてはならない道具となりました。
この端末のおかげで異性と音声通話ができ、メールのやり取りができ、写真の交換はもちろんビデオのやり取りもできます。相手と一緒にいないときの重要なコミュニケーションは、ほぼ携帯電話によってやり取りされると言っても過言ではないでしょう。
しかし同じ品質の電話やメールをしたとしても、携帯電話の会社によっては値段もちがっており、なかにはほぼ定額制のような料金体系をとっている会社もあります。
携帯会社をかえたとして、そこで抑えられる金額は個人差があるとはいえ月に数千円から、多くとも1万円と言ったところでしょうか。ですが1年間、12ヶ月分となるとその金額はプロフェッショナルを雇える金額になります。
そのように、どのコストを恋愛にふり返られるのかを、先ほど書いていただいたコスト表とにらめっこをしながら、いちどしっかり吟味してみてください。「恋愛にはお金をこれ以上出せないから、これ以上自分を磨くのにも限界がある」というラインもきっと変わることでしょう。
この講座を実践していただくためにはすくなくとも必ず一度は美のプロフェッショナルを雇う緊張感を知る必要があります。もし支出を抑えることが可能な場所があり、その分を他の恋愛コストに回せるので実践してみてください。
さて先週までこの講座で練習してきたことは、モテるための恋愛理論や声のかけ方、容姿の磨き方といった異性とのファーストコンタクトにおける技術的な側面がほとんどでした。
まずは相手とのコミュニケーションの「とっかかり」をつかむこと。
そのことに重点を置いてきました。
はじめは十回に一回しか上手くいかなかったとしても、技術が向上してくると七回に一回、五回に一回と連絡先を手に入れる回数が増えて、次にコミュニケーションをとれる確率が高くなってきます。容姿を磨いて、あなたが自分の色を見せられるようになってくればその確率はさらに高まってくることでしょう。
もし「この人こそ、私が求めていた人だ」と思えるような人と出会ったときには、それまでの練習がそこで活かされることになります。
とはいえ、ファーストコンタクトの成功は、あくまで次のコンタクトをとることが可能になったということに過ぎません。相手の思考グラフにあなたの名前を書き込んでいくには、ここからが本格的な勝負になります。
そしてそれは、ちいさくスコアを稼いでいく長丁場です。二三日で決着がつくような試合ではありませんし、基本的には二週間以上、多くの場合は一ヶ月から二ヶ月と考えていいでしょう。相手の思考グラフに一気に名前を書き込めるチャンスはあるものの、基本的には小さく小さく名前を書き込んでいくことの積み重ねです。
もちろんその期間ずっと集中力を保ちつづけるのは、非常に困難な仕事です。
ここからさきは自分ひとりで行う作業ではありませんし、コミュニケーションをとる相手もひとりに限定されているわけではありません。全方位的に気を配りつづけ、あーでもないこーでもないと悩んでいるとすぐに疲れてしまいますし、自分自身が混乱してしまう場合もあります。
ですが、あまり心配はしないでください。
異性とコミュニケーションをとる上で、モテるためにしなければならないことは、あるひとつの考え方を理解しておくだけなのです。
☆あらゆるコミュニケーションは、自分から終わらせること。
ここでいうコミュニケーションとは電話やメール、デートやキスといった相手とのキャッチボールが必要になるおおよそすべての接触です。異性とのコミュニケーションの基本は、自分がボールを持った状態でそのコミュニケーションを終わらせるところにあります。
詳しい手法は次項で述べますが、今回はその考え方を理解してください。
たとえば深夜にメールのやり取りを何度かしていたとしても、最後にメールを出すのはあなたではありません。必ず相手がメールを出した状態で、そのメールに返信することなくコミュニケーションを終えるのです。
電話で話していたとしても、先にその電話を切るタイミングを作るのはあなたです。
デートを切りあげる時間を決めるのもあなた。
相手の唇から離れるタイミングを決めるのもあなたです。(セックスとなると身体的な理由から男性主導で終わってしまいますが、その場を離れるタイミングを決めるのは必ずあなたです)
なぜ、このようにコミュニケーションをあなたから終わらせる必要があるのでしょう?
もし疑問に思った方は、もういちど冒頭の3つの定義を読みかえしてみましょう。
このコミュニケーション技術は、冒頭に述べた戦略の定義に基づいています。つまり、自分の思考を占領されないまま、いかにして相手の思考を占領するか、ということを最大の目的としています。
コミュニケーションは、キャッチボールと同じです。
相手の捕りやすい場所にボールを投げ込んでお互いの糸口をつかんだり、捕れるか捕れないかわからないぎりぎりの場所に投げ込んでお互いの相性を探ったり、剛速球を受けとめたり、変化球にトライしたりと、そうやって相手との関係を深めていきます。
ですが、自分の投げたボールが、すぐに相手から返ってこなかったらどうでしょう。
いつあのボールが返ってくるのだろう?
いままではすぐに返ってきたのに、なんでまだ返ってこないのだろう?
そうやってイライラするかもしれませんし、不安に感じるかもしれません。
いずれにせよ、相手はボールが返ってくるまでの待ち時間を持つことになります。
このボールの待ち時間こそが、相手の思考グラフにあなたの名前が書かれている瞬間です。
たとえば最近知り合った青山さんという異性と、夜に何度かメールのやり取りがあったとしましょう。その内容はたまたまお互いが好きだった同じドラマに関する、他愛もない内容だったとします。メールは二往復していて、それは十分ほどの短い間に行われました。しかしあなたが青山さんに三度目のメールを送ってからというもの、ぷつりとメールのやりとりは途切れてしまいます。
なにか相手の気に障るような内容でもないはずです。
でも三十分経っても返信はありません。
あなたの思考グラフが占領されていなければ、この出来事はたんに「相手が電話中かもしれない」というだけで、気にもせず片づけられます。でも実際、あなたは寝るまでになんどか携帯電話をみなおすのではないでしょうか。
そしてもしこれが恋愛状態に陥っている場合であれば、なぜ途中で連絡が無くなってしまったのか気になって仕方がなく、人によってはもう一度自分から連絡する場合もあるでしょうし、気になって眠れないこともあるでしょう。
あなたも誰かに激しい恋愛感情を抱いているときに、相手からの連絡を待った経験はないでしょうか。そして待っている間こそ、辛く苦しい思いをした記憶はないでしょうか。
自分が待ち時間を持つということは、自分の思考グラフに相手の名前が書かれるということです。
相手に待ち時間を持たせるということは、相手の思考グラフに相手の名前を書き込んでいるということです。
恋愛は主導権の取り合いです。
そしてそのボールを持っている側の人間が、主導権を持つことになります。
ボールを一度手放してしまうと、次にいつそのボールが投げ込まれてくるのか構えていなくてはなりません。そのことをよく理解しておきましょう。
それではもうすこし具体的に、コミュニケーションの基本について考えていきましょう。
たとえば知り合ったばかりの人とデートをして帰ってきた夜に、メールのやり取りをしていたとします。最後に相手がメールを自分に送った状態を考えてみましょう。簡単に言うと
相手「今日は楽しかったね」
あなた「私も。ありがとう」
相手「おやすみ」
この状態で、必ずコミュニケーションを閉じましょう。
おやすみの挨拶の返事がなくてもとくべつに困ることはありませんから、この状態でメールのやりとりを終わらせることにあなたが大きな心理的負担を抱えることもないでしょう。
これはもう「クセ」として身につけてください。
相手のことが気になっている場合は、どうしてもコミュニケーションをつづけたいという気持ちがありますし、自分からメールを送って終わりにしないと気になって仕方がない、という人もいるでしょう。しかしここは心を鬼にして、自分がボールを持ったままでメールのやり取りを終わらせましょう。
でも時には返事が必要なメールだってあります。
相手「今度ご飯食べようよ。空いてる日ってある?」
あなた「楽しみ。来週の水曜か金曜の夜なら平気」
相手「じゃあ、金曜の夜でいいかな?」
あなたはこのメールにすぐ返信してしまうでしょうか。
でも、このメールもその夜に返事を出す必要はありません。緊急の要件ではないのですから、翌朝にメールを返信してもデートの予定は変わらないのです。
あなたからの返信がないと、とうぜん相手は「あれ返事は?」とあなたの返信を待つようになります。その時間は五分かもしれないですし、二十分かもしれません。でもたとえわずかであったとしても、その待ち時間に、あなたの名前は相手の思考グラフに書き込まれるのです。
こんなことをして、相手に嫌われたらどうするの、と思われる方もいらっしゃると思います。たしかにこの待たせる技術は、扱い方を間違えると相手に不快感を与えてしまう場合もあります。恋愛は駆け引きですので、毎回つねにこのようなコミュニケーションをとるのではなく、場合によっては相手にも主導権を(一時的に)渡してあげることも大切です。
ですが、基本姿勢として、あなたが主導権を握ることを忘れないでください。
そしてこの技術の目的が「不快」ではなく「不安」を呼び込むためのものということを意識していれば、その分水嶺(ぶんすいれい)はおのずと見えてきます。
いわゆる小悪魔と呼ばれている女性たちはこの見極めが非常に上手です。いまからモテることを学んでいくあなたは、実際に何人かを相手にコミュニケーションの練習をして、どこまでが有効で、どこまでがやりすぎなのかを肌で覚える必要があります。
飴とムチ、とはよく言いますが、与えられる立場から恋愛に参加するのではなく、与える立場から恋愛に参加するのです。
この待たせる技術は上達すればするほど、相手の思考グラフに名前を書き込みやすくなります。
さて、電話やデートの場合も、この基本に立って行動していきます。
電話の場合はメールとは違い、いちどコミュニケーションを終えてしまったら、そのつづきをどちらかが待つということはありません。しかし、電話を切り終えた後の余韻にどのような色をつけるのかはあなたが決めることができます。
電話で長時間話して盛り上がり、会話が終わるのを惜しむようにしてお互いになんとなく電話を切るのも悪くはありません。しかしより望ましいのは、相手が会話を終えるタイミングを計るよりすこし前に、相手が無防備の状態で、あなたから電話を切りあげるタイミングを提示するのがベストです。
会話で完全に相手を満足させてしまうよりも、まだ未完全のまま会話を切りあげた方が、効果的にあなたの名前を書き込む余白を作ることができるからです。
当然そこにあるべきものが、ない。
どんなに些細な不安であっても、その不安は相手の思考グラフにあなたの名前を書き込む隙間を作ってくれます。
では今週の課題です。
・新しく連絡先を手に入れていた異性、すくなくとも三人と本格的なメールのやり取りをはじめる。一人しか相手がいない場合は、三人揃うまで待つ。(連絡先をきく練習に本腰を入れて連絡先を獲得してください)
・その三人とは必ず毎日、メールで連絡を取る。
・電話はなるべく避ける。
・メールのやり取りは、必ずあなたから切りあげる。
三人を同時に相手にしなくてはならないのは、相手が一人の場合だと恋愛リスクが高まってしまうからです。
たとえ自分にその気がなかったとしても、たとえその人を練習相手だと見ていたとしても、もしその人との関係が切れそうになったときや複雑化したとき、そこに恋愛リスクが発生します。たったひとつだけのものを失うことの不安は、あなたの思考グラフに相手の名前が書き込まれる隙間を作ってしまうのです。
また逆に、相手が三人いると、集中力を分散せざるを得なくなります。たとえそのうちのひとりとの関係が切れそうになったり、複雑化したりしても、相手の名前が書き込まれるリスクはそこまで高くありません。
まだまだ、いまはモテるための途上にあります。
いまはただ、コミュニケーションの基本をしっかりと押さえることに集中するようにしてください。