美意識を手っとりばやく磨くには、自分の美意識の先生を見つけてしまうことだというのは先週に説明したとおりです。
どの人に、自分をコーディネートしてもらうか。
そう考えて周囲を見まわしていくと「アクセサリーのことをきくならあの人以外にはあり得ないな」とか「この人は洋服には詳しそうだけど、美白のことならあの人の方が知っていそうだな」とか、それまではあまり気にしていなかったその人の部分が見えてきませんか?
いつもの生活のなかでそのような視線を持つことだけでも、自分の美意識というのは磨かれていきます。この講座を終えてからも、日頃の生活から他人の美意識に注意を払うようにしてください。そのことであなたの美意識も磨かれていきます。
さて今週も先週にひきつづき美意識についてのお話です。
今週は先週よりももうすこし詳しく、具体的な磨き方について考えていきましょう。
☆ 美意識は、緊張感によって磨かれる。
息の詰まるような緊張感は、ときには自分を押しつぶしてしまうことがあります。
もし第1週で異性に声をかけるまで、自分からあまり声をかけられなかったような人は、このような緊張感によって体を縛られてしまっていたのではないかと思います。
でも、緊張を感じることは、悪いことではありません。
大きすぎる緊張は自分の障害になりますが、適度な緊張感は、むしろ助けになってくれることがほとんどです。ぴりりとした緊張感は自分の心と体を引き締めてくれますし、なにかを達成するために行動を起こすシチュエーション──たとえば学校のテスト、スポーツの試合、会社のプレゼン──では、あなたが全力を出し切るために大きな力となってくれます。
それは美意識を磨くときも同じです。
「女であることを意識しろ」というのは女性が美を保つためによくいわれる言葉でありますが、この言葉が意味していることも「緊張感を持て」というのと同じです。この講座で繰り返し言っている「練習だという意識をしてください」というのもまた同じですね。
とはいえ、ふだんから緊張感を持つとなると、逆に気が抜けてしまうのもまた事実です。長い時間同じことをやっているとどうしても散漫になってしまいますものね。なにごともオンとオフが大事です。
この講座では、ひとつルールを作ります。
ふと気が抜けてしまっていても、ルールがあれば自然と適度な緊張感を身につけることができ、それを習慣にしてしまうことで美意識を磨いていくことができます。
ルールはいたってシンプルです。
☆容姿に関するお手入れは、3回に1回、新しいものに変えること。
これは言葉通りのルールです。
たとえば化粧品。同じブランド、同じプロダクトばかりを使っていた人は、いま使っているものがなくなったら「必ず」いままで使ったことのないブランドやプロダクトに挑戦してください。基礎化粧品に関しても同じです。
洋服やアクセサリーについてはもともとあまり同じブランドをたてつづけに購入することはないかもしれませんが、下着や鞄はこのルールに従ってください。
新しいものに挑戦することは、緊張感を刺激します。
その際にはとうぜん下調べも必要になってきますので、3回に1回のサイクルをくり返していくと、いつのまにか様々な知識も増えていくでしょう。しかもその知識は体験をともないますので、そのままあなたが人に教えてあげることができる、あなただけの生きた知識となります。
このルールでもっとも効果を発揮するのは美容院とネイルサロンです。
どれだけ長く通っている美容院でも「必ず」3回に1回は別の新しい美容院へ通ってください。
むしろ、長く通っていれば通っているだけ、このルールは効果的です。
先ほども述べたように、長い間同じことをしていると、どうしても緊張感は和らいでしまいます。担当の美容師さんと友人のように親しくしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。その場合、あなたと同じように、美容師さん自身も緊張感を和らげている場合があります。
3回に、1回。
新しい美容院に通うことで、きちんと美容師さんにも緊張感を与えられます。
自分の技術・センスが他と比べられている、と知ると美容師さんもよりいっそう張りきって、自分の持っているものを発揮してくれようとしてくれます。
一方で、あなたは3回に1回、新しい自分の可能性に出会えることになります。「自分にはこんな髪型も似合うんだ」という新しい自分のイメージに触れることができるでしょう。もちろん新しい美容師さんには「いつもは違う美容院に通っている」ことを告げましょう。そうすれば「本命の美容師さんに負けてたまるか」とその美容師さんも同じように彼の技術を発揮してくれようとします。
「そんなことをしたら、いつも通っている美容師さんに悪い」
と感じてしまうかたもいると思います。
しかし、本当はその逆なのです。
「自分は、選ばれている」
という喜びを、その美容師さんは感じることでしょう。他の多くの美容院を知っているお客さんが「やっぱり、あなたが一番」と行ってくれることに喜びを感じない美容師はいないでしょう。もしあなたが他の美容院に行ったことを不愉快に思うような美容師さんがいるとしたら、それはプロフェッショナル意識の欠如としか言えません。彼はいつのまにかあなたを友達かなにかと勘違いしている(その上、あなたからお金を取っている)のです。
プロフェッショナル意識が欠如した美容師に、あなたの美を任せることはありません。
彼は美の専門家として、あなたの美の一部に携わっているのですから。
美容院、化粧品、下着にかかわらず、新しく出会ったものでものすごく気に入ったものがあれば、それを本命・定番に格上げしてあげましょう。こんどはそれを本命として、3回に1回のルールをサイクルさせていきます。
さて今回の課題です。
・あたらしい美容院に行く。もしこの前に行ったばかりだとしても、二週間以上たっているのなら、あたらしい美容院へ行ってみてください。
どこへ行けばいいのか、それは先週の美意識の師匠にたずねてみると良いでしょう。もしまだ誰にもきいていなかったとしても、美容院は比較的誰にでも紹介しやすいものです(人に紹介すると紹介者が割引になりますしね)、臆せずに美容院だけでもきいてみましょう。
もしできるのであれば、いろいろなものにこのルールを適用してみてください。
慣れてくると「あ、そろそろ次に試す新しいもの探さなきゃ」と自然に行動できるようになります。しかも、新しいものを試す瞬間にはちゃんと緊張感が働きますし、以前のものと比べることで目もきくようになってきます。
3回に1回のルールは、あなたの美意識をダイレクトに磨いてくれます。
さて、先週「身近なところに美意識の先生を見つけられない場合」のことについて触れたと思います。その場合は他の方法があるというのも説明しましたね。
美意識の高い人を見つけて、その人を自分の美意識の先生にする。
もしそれができるのなら、それに越したことはありません。身近にいる人であればあるほど、なにか質問があればすぐに聞くことができますし、自分が気を抜いていないかちゃんとチェックしてもくれます。
ですが、もし身近にそのような人がいない場合はどうすればよいのでしょう。
答えは、プロフェッショナルを雇うこと、です。
じつはあなたはふだんの生活のなかで、いまもすでにプロの専門家を雇っています。わかりやすいもので言えば、美容師であり、ネイリストです。彼らについては前項でも触れましたね。
ただ美容院に行くときに「プロフェッショナルを雇う」という意識はしていないかもしれません。でも実際にあなたは専門家にギャラを支払い、彼らの技術・サービスの提供を受けています。彼らはそのジャンルにおいてじゅうぶんに訓練を積んだ専門家であって、ぜったいに素人にはできない仕事をしています。
また美容のプロフェッショナルはなにも美容師とネイリストに限られたことではありません。エステティシャンやスタイリスト、メイクアップアーティストもそうですし、マッサージ師も女性の美を担うプロフェッショナルのうちの一人です。
身近に美意識の先生がいない場合は、それをプロの手に委ねましょう。
プロフェッショナルに委ねる範囲を、美容師やネイリストから広げていくのです。
プロフェッショナルを雇う意義は、単に高度なサービスの提供を受けるためだけではありません。お金を払うことは、友人に頼むよりも効果的な側面があります。あなたがお金を払う意識は、そのまま美意識を学ぶ集中力にも繋がるからです。きっと「せっかくお金を払ってるんだから」と美意識を学ぶあなたの背筋も伸びることでしょう。なんとなく美しくなっていくのではなく、気合いを入れて美しくなっていくのです。
プロのスタイリスト、プロのメイク、プロのヘアメイク、そしてそれらを統一させるプロのコーディネーター。彼らはプロフェッショナルなだけあり、その知識は一般人のそれとは質も量も違います。プロフェッショナルと共に自分のスタイリングを考えていくのは、それだけであなたに緊張感を与えてくれます。
ではメイクのプロはどのようにして雇えばよいでしょうか。
化粧品会社ではメイクサロンを開いているところがあります。もちろん使うブランドはその化粧品会社のもの限られてしまいますが、相手もプロですのでそのブランドの化粧品がいかにあなたを美しく変えるのか真剣にメイクをしてくれるでしょう。きっとあなたがいままで会ったことのない女性を、鏡のなかに見るはずです。
またヘアサロンでもメイクの講座を開いているところはすくなくありません。こちらの場合は髪型に合うメイクを作ってくれるのがとても上手ですし、同じ人から様々なものを教えてもらったほうがトータルとしてのバランスがとりやすくなります。
いままでプロにメイクをしてもらったことがない、というかたは是非この機会にトライしてみてください。
スタイリスト事務所はインターネットで検索できます。
「ファッション」「スタイリスト」「事務所」というようなキーワードでさまざまな事務所が出てきます。あなたの住んでいる地域をキーワードに含めて検索してみましょう。
またインターネットの検索でスタイリストを選ぶのが大変だと思われる方は、いま自分の髪を担当してもらっている美容師さんにスタイリストの紹介をお願いするのもひとつの方法でしょう。美容業界のプロフェッショナルは職能をまたいで情報交換をしている場合が多くあるので(特にアンテナの感度の高いプロフェッショナルであればあるほどその情報網は広範囲に及んでいます)彼らから信用のおけるスタイリストを紹介してもらってもかまいません。
ファッションのスタイリングは、メイク以上にプロとの接点がすくないため、プロにお願いすることに気が引けてしまうかもしれません。ですがこれも異性に声をかける練習と同じ、慣れてしまえばなんということはありません。まずは自分から動いてみることです。
それでもやはりいきなりプロのスタイリストにお願いする勇気がない、という方はもうすこし身近なプロフェッショナルにお願いすることもできます。
洋服店の店員さんにコーディネートをお願いするのです。
ただこの場合はまずコーディネートを考えてもらう時間が限定されてしまいます。
またそのコーディネートの内容も洋服店舗内にある服装に限定されてしまうことになります。その洋服店が偶然あなたをより美しく見せるファッションアイテムを多く取り揃えている店舗であればよいですが、方向性がまったく違う店舗であるかもしれません。ですので、店舗の店員さんにコーディネートをお願いする場合には、ブランドショップよりはセレクトショップである方が望ましいでしょう。
プロフェッショナルを雇う上で、もっとも難しいのはあなたのどの部分に、どのプロを起用するかを選ぶトータルコーディネーターです。
前項で述べた「美意識の先生」に当たる人は、実はまさにこのトータルコーディネーターです。どの美容院へ行き、どのネイルサロンへ行き、どのブランドの洋服を選び、どのメーカーの化粧品を使うか。これらを全体的にまとめるのは大変重要な役割です。
この役割はあなたの見せ方をよく理解している人であり、かつ美容やファッションといった情報に詳しい人でなければなりません。いったんあなたが美意識を磨きはじめてしまえば、そう時間もかからないうちにトータルコーディネート役をあなた自身でこなすことになりますが(それができるほど情報に詳しくなり、あなた自身の見せ方についても熟知するようになります)、それまではその大役は美意識の先生として信用のできる人にお願いしましょう。
このトータルコーディネート役を自分の交友範囲からではなくプロフェッショナルから選ぶ場合は、美容師かプロのスタイリストにお願いするのがよいでしょう。あるいは先ほどいったように美容師からスタイリストの紹介を受けた場合は、この二人が友人同士である場合が多いと思いますので、彼らにチームを組んでもらってあなたのトータルコーディネートをお願いしてもかまいません。
ですが誰にお願いする場合にもきちんと仕事として、その対価を(お金ではなく、なにかをご馳走するというケースもあるでしょうが)支払うことが大切です。単なる遊びとしてあなたの美を任せるのではなく、きちんと目的のある仕事としてお願いしましょう。あなたとしても「プロを雇っている」という意識をつよく保つのです。
自分の交友範囲のなかから先生を見つけるのも、プロフェッショナルにお金を払うのも、どちらであっても美意識の先生を見つけて美意識を磨いていくことの重要性にかわりはありません。
でも結果的には美容院で、サロンで、化粧品店で、あなたはお金を払いサービスなり商品なりを購入することになります。お金を払って自分が手にしていったもので、あなたは新しい自分の可能性に出会い、美意識は磨かれ、結果として容姿もまた磨かれていくことになります。
ではここでもうひとつ美意識の重要なポイントを考えてみたいと思います。
美意識はお金を支払うことで磨くことはできる。
でも、美そのものは、お金では買えない。
たしかにお金さえ支払って一流のプロフェッショナル集団を雇えば、人は持てる限りの美しさを発揮することができます。それは一見、美はお金で買える実例のようにも見えます。
しかし先週も説明したように、テレビショーのなかで美しく変身した主婦や、格好良く生まれ変わった父親が、その美しさをいつまでもキープできているかという疑問をもういちど思い浮かべてみてください。
主婦や父親のために超一流のプロ集団がスクラムを組み、圧倒的な想像力と技術を駆使して、素材のもてる可能性を見事なまでに引き出したとします。ですが、主婦や父親はその美を何年も、何ヶ月も、もしかしたら数日さえもたもつことはできないでしょう。
それは前にもいったようにプロ集団は魚を与えるだけで、魚の釣り方を教えていないからです。
ここに美の本質があります。
美は構築するよりも、それを保ちつづけるほうが遥かに困難なのです。
それゆえ、容姿の美しさを獲得するには、まず美意識を磨くことが先決なのです。
たしかにお金を払えばダイエットという長期的なプログラムを組むまでもなく、脂肪吸引によっていっぺんに体重を落とすことも可能でしょう。ですが美意識なくしてその新しい体型を維持することはできません。
整形手術によって顔の美しさを獲得することは可能です。しかし新しい顔の美しさを引き立たせるメイクやヘアスタイル、ファッションについては、美意識なくしては手に入れることができません。
お金を支払えばたしかに美に触れることはできます。
しかしそれを両手で持ちつづけることはできません。v
話がすこしそれましたね。
ここでは美意識を学んでいく上で、もうひとつ注意を向けて欲しいことを述べておきます。そこで友人なりプロフェッショナルなりの美意識の先生から勉強するときに、次のことは特に意識してください。
それは「自己再現性」です。
いくら美容師さんに美しいヘアスタイルにしてもらっても。
いくらメイクさんに美しいメイクを施してもらっても。
それを一週間後に自分の部屋の鏡の前で再現できなければ、それはなにも手にしていないのと同じです。あなたはお金を支払って手にしたものを、いつのまにか時間に奪われてしまっていることになります。たしかにその一瞬は美しく変われたかもしれませんが、それはプロフェッショナルの前でしか現れない、まったく応用のきかない美しさでしかありません。
たしかにプロフェッショナルの手でしか再現できない、繊細な美しさは存在します(成人式や結婚式といったある限られた一日に、あなたのもっている美しさを最大限に引き出すためには、自己再現性よりも専門家でしか作り得ないものを手にしたほうがよいでしょう)。
しかしふだん美容院やメイクサロンに通ってあなたの美を整えてもらうときは、プロでしか再現できない最大限の美しさでは逆に意味がありません。
彼らにあなたが教えてもらうのは、自分で再現できる美しさでなければならないのです。
デートや合コンの際にいちいち美容院に行くことはできませんし、出社の際に毎朝スタイリストがついてくれるわけでもありません。
いざというときに、自分の手で自分を作り上げられなければ意味がないのです。
そしてあなたは恋愛の相手といつどの瞬間に出会うかわかりません。電車の中、仕事先、友人の誕生日会の席で急に興味を持てる異性と出会うかもしれないのです。
いざ、という瞬間は、いつあなたに訪れるかわからない。
そのときに、あなたの隣にはプロフェッショナルはいないのです。
自分で再現できる、最高の美しさ。
あなたがプロフェッショナルから教えてもらうのはそこです。
もしわからないことがあればどんな些細なことでもきいておきましょう。
「これ、どうやってドライヤーをあてるの?」
「スプレーはどの位置からかけるの?」
「この色、どうやって作るの?」v
「この服、他になにと合わせられるの?」
そして自分でできる限り忠実にそれを再現してみましょう。できなければなんどでも先生に聞きましょう。なんどもトライしていくうちに、その技術はあなたの美意識にしっかりと組み込まれ、気づいたときには人にも時間にも奪われないあなたの美しさのベースとなっていることでしょう。
一ヶ月間、お疲れさまでした。
モテるための訓練を体験してみて、どう感じたでしょうか。
いままでに体験したことのないような経験がふくまれていたのではないでしょうか。
ですが課題が終わっても引きつづき訓練をつづけていくような項目も多くあります。そちらに関してはまだまだ手を抜かずに、毎日意識して訓練をつづけてみてください。
とくに容姿を磨く作業は、「美容院に行って変わった」とその場で終わってしまうような感覚になりやすいものです。しかし、ヘアスタイルであろうとファッションであろうと、きちんと自分の技術にすることが大切であり、今日やって今日のうちに終わっている、というものではありません。容姿を磨く、美意識を磨く作業は、たとえ小さな一歩でも、毎日すこしずつ意識して、実践して、つづけていくことに大きな意味があります。
そして、一ヶ月目を終えるにあたって最後にひとつだけ。
これは容姿を磨くことにも、恋愛技術を向上させることにも共通して言えることですが、モテるためにもっとも必要なのは、生まれ持っている美しさでも、プロフェッショナルを雇うお金でもありません。あなたに必要なのはただひとつ、あなたの「覚悟」です。
モテる覚悟。
それさえあれば、あなたは生まれ変われます。
どんなものごとでも、はじめるときがもっとも大変です。
異性の興味を惹きつけるための努力は、はじめにあなたに多くの時間を、そしてやがてモテる前にはあまり意識しなかったような精神力を要求してきます。ですがそれを乗り越えてしまえばあとは異性の興味を惹くことは信じられないほど楽に、簡単にできるようになってしまいます。
一ヶ月目を終え、最後の課題を出しておきましょう。
・鏡の前で、自分の覚悟を、確認する。
鏡の前できちんと確認できたでしょうか。
その気持ちを持って、二ヶ月目へと進みましょう。